足元の日本株の上昇は目覚ましいものがあります。中国マネーや大口海外投資家の資産が流入していることが大きな要因の一つと考えられていますが、その大口海外投資家の一つ、ブラックロックが最近J-REITにも目をつけ買いが入っています。日本株が高騰する中、出遅れているJ-REITに着目し、優良な5銘柄を選出してみましたのでご紹介いたします。
REIT(リート)とは
Real Estate Investment Trust(不動産投資信託)の頭文字をとった略称です。多数の投資家から集めた資金で、不動産(ホテル・商業施設・オフィスビル・住宅・物流倉庫など)を購入し、得られた賃料収入や売却益などを投資家に分配する金融商品です。J-REITは、日本(Japan)のREITという意味です。
REITの種類としては主に、「単一用途特化型REIT」と「複数用途型REIT」があります。「単一用途特化型REIT」には「事務所」「住居」「ホテル」「商業施設」「物流施設」に特化したものがあり、「複数用途型REIT」には2種類の特化型を合わせた「複数型」と3種類以上合わせた「総合型」があります。
REITと不動産株、現物不動産の違い
違いを表でまとめました。
REIT | 不動産株式 | 現物不動産 | |
---|---|---|---|
投資対象 | 不動産投資法人(不動産に限定) | 株式会社(不動産以外にも様々な事業展開) | 現物の不動産 |
不動産の種類 | ホテル、商業施設、オフィスビル、住宅、物流倉庫、ヘルスケア施設など | ← | 住居(アパート、マンション)がメインなど |
必要資金 | 中額(数万円〜数十万円) | 小額(数千円〜数万円) | 高額(数百万〜数千万円) |
流動性 | 高(即売買可) | 高(即売買可) | 低(なかなか売れない) |
分散 | 容易 | 容易 | 困難 |
価格変動(ボラティリティ) | 高 | 高 | 低 |
初心者へのおすすめ度 | ★★★★ | ★★★★★ | ★ |
REITと不動産株式の違いがわかりにくいかと思いますので、解説します。
どちらも証券取引所に上場しておりネット証券で売買ができるので手続き上ことなる点はありません。しかし、我々投資家が利益を得るスキーム、つまりREITや不動産株式会社がどのように収益を上げ、どのように投資家に利益を分配するかのスキームに違いがあります。
投資家が利益を得る方法は、「①値上がり益」「②配当金・分配金」「③株主優待」があります。REITは、運用利益の90%以上を「②分配金」として投資家に分配することで、法人税が免除される仕組みになっているので「②分配金」が多いのです。そのため、長期保有しながら「②分配金」を受け取るという投資スタンスが合う投資家に向いています。
なぜ今REATがアツいのか
足元で日本株の上昇が続く中、配当金利回りの低下で投資妙味が薄く感じている高配当株投資家の皆さまも多いかと思います。一方REITに目をやると、2021年から長らく下落傾向が続き、その割安感がコロナショック時に迫る水準に低下してきています。3月の日銀会合でのマイナス金利解除を受けて材料出尽くしとの見方から、反発上昇に転じ、上昇基調に変わるか?の節目に来ております。
REITのメリット・デメリット
では改めて、REITのメリデメを整理します。
【メリット】
▶️分配金が安定・・・分配金原資は賃料などの安定収入であり、かつ法人税の税制メリットもあり収益における分配金の割合が高い。
▶️管理が不要・・・現物不動産のように、物件の広告や維持管理が不要。
▶️流動性が高い・・・株式市場で自由に売買でき換金性が高い。
【デメリット】
▶️金利動向に左右される・・・金利は手数料であるため高金利局面では収益が低下しやすい。必ずしも金利が高いときにREIT価格が下がるかというとそうでは無い。
▶️自然災害に弱い・・・本質的には現物不動産に投資していることに同義であり、現物不動産が災害影響を受けると収益も落ち、価格下落や分配金減少に繋がる。
選ぶならここを見ろ!REITの選定ポイント
▶️分配金の推移・・・安定的に成長しながら分配金が推移しているか。リーマンショックやコロナショックで大きく減配していないか。
▶️格付け・・・AAAからCまでの格付けがあり、A以上がおすすめ。格付けの確認はこちらのサイトからできます。
▶️NAV倍率・・・Net Asset Valueの略。時価価値をベースにした純資産価値を指し、株式でいうPBRのこと。1.0倍より低いと割安と判断する。
▶️NOI利回り・・・Net Operating Incomeの利回りのこと。NOIとは、年間の家賃収入から経費を差し引いたもの(純利益)で、投資額に対して得られるNOIを割合で示したもの。4〜6%が一般的。
NOI利回り(%)={満室時の年間家賃収入×(1-空室率)-年間諸経費}÷(物件価格+購入時諸経費)×100
一般的に購入価格が安かったり、経費が抑えられていれば、NOI利回りは高いく良い考えられる。ただし、都内よりも地方のほうが高い傾向にあるが、地方は家賃相場も低く、年間家賃収入は少なくなり、また、空室率が高くなる可能性もあるため注意が必要。
▶️有利子負債率・・・有利子負債が自己資本に占める割合を示した指標であり、金利上昇局面においては、負債が多いと支払う手数料も高くなるため確認必要。
▶️バック(スポンサー)・・・大企業がバックについていると、信用性や安全性が高い。
▶️上場歴・・・マイナス金利政策が開始された2016年以前の銘柄は、金利上昇による収益確保の実績があるので選定ポイントの一つ。
おすすめJ-REIT5選
1.賃貸住宅系REIT
賃貸住宅は一度住むと数年〜数十年住むことから、住居需要は短期的には変動せず、そのため分配金が減りにいので、ディフェンシブなREITの一つです。REIT価格もなかなか落ちづらく、長らく分配金3%ほどで推移していたところが、足元では4%付近まで上昇してきています。
2.物流施設系REIT
2021年をピークに下落傾向ですが、Eコマース(ネットショッピング)業界が好調なことから、業績は堅調で施設稼働率もフルに近い状態です。また分配金の収入源である賃料も5〜10年という長期固定が多く、安定性が高いことが特徴です。加えて、物流労働者の「2024年問題」の人手不足に対応するため、ロボットやAIを使った物流効率の改善が目覚ましく進んでいます。
これらを踏まえてオススメ5選の銘柄を紹介していきます。
アドバンス・レジデンス投資法人(証券コード:3269)
伊藤忠商事がスポンサーの住居特化型REITで、東京都心物件が7割を占めます。上場は2013年、分配金も右肩上がりで、個人的に最も保有しておきたいJ-REITの一つです。投資口価格が30万円超と少し高く、また利回りは一時4%近くまで上昇したものの足元下落しているので、再び4%タッチを狙って仕込みたいと考えています。
三菱地所物流リート投資法人(証券コード:3481)
三菱地所がスポンサーの物流施設特化型REITで、関東が5割、中部近畿が4割を占めます。上場は2017年と比較的新しく、分配金は右肩上がりで、物流J-REITとして欲しい銘柄の一つです。分配金利回りはコロナ水準並みに上昇しております。NOI利回りは少し下落傾向です。
三井不動産ロジスティクスパーク投資法人(証券コード:3471)
三井不動産がスポンサーの物流施設特化型REITで、関東が6割、中部近畿が4割を占めます。上場は2016年で、分配金は右肩上がりで、こちらも物流J-REITとして欲しい銘柄の一つです。また分配金利回りもコロナ時と同水準まで上昇しています。NOI利回りは少し下落傾向です。
SOSiLA物流リート投資法人(証券コード:2979)
住友商事がスポンサーの物流施設特化型REITで、関東が6割、中部近畿が4割を占めます。上場は2019年と新しいですが、分配金は右肩上がりで、気になる銘柄です。また分配金利回りもコロナ時と同水準まで上昇しています。NOI利回りは少し下落傾向です。
産業ファンド投資法人(証券コード:3249)
スポンサーがKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)というニューヨーク拠点の投資会社でアメリカで最も歴史のあるPEファンドと言われています。複合型REITで、羽田空港メンテナンスセンターなどインフラ施設や物流施設に投資しています。地域別比率は、東京25%、関東40%、中部近畿が25%を占めます。上場は2007年で、投資口の分割を考慮すると分配金は右肩上がりです。また分配金利回りもコロナ時と同水準まで上昇しています。NOI利回りは横ばいです。
番外編:ヘルスケア&メディカル投資法人(証券コード:3455)
番外編として紹介するのが、J-REITで唯一ヘルスケア施設特化型のこちらです。今後高齢化による需要が伸びていく分野であり、長期目線で投資を検討しても良いと考えています。東京・関東・中部・近畿で85%を占め、施設は75%が老人ホームで病院も所有しています。分配金はやや増加傾向で安定性もあるように見れます。投資口の急落を狙って、ウォッチリストに入れておいてもいいかもしれません。
調べるならここ!おすすめサイト
J-REITを調査する際のおすすめサイトをご紹介します。
各指標の推移や、施設・地域分散割合を見るなら・・・不動産投信情報ポータル
格付けや各REITの詳細HPを見るなら・・・インカム投資ポータル
長期チャートを見るなら・・・SBI証券
最後に
足元の株価上昇で購入銘柄に困っている方、不動産をポートフォリオに組み入れ分散を図りたい方は、ぜひこの機会にJ-REITを検討してみてはいかがでしょうか。私もポートフォリオの5-10%を目安に組み入れを行いたいと思います。